Sun of the Sleepless - To the Elements
まさかの4月以来の更新。Time fliesですね。
最早誰も見てくれていないと思うが、基本的に自己満足で気が向いたときに書いているので、思い立ったが吉日。
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ドイツのブラックメタル、2017年作。
Prophecy prod.の傘下レーベル、Lupus Loungeよりリリース。Empyriumの中の人の一人ブラックメタルプロジェクト。
歴史的大名盤「Poems to the Wretches Hearts」をリリースしたバンドということで有名なSun of the Sleepless。ずっと音沙汰無くて半ば諦めていたわけだが、2004年に出したSplit以来13年ぶりのまさかの音源! 買わない理由はない...。
1999年のEPではEmpyriumのフォーキッシュな空気感とブラックメタルのアグレッションが奇跡の融合を果たしていたわけだが、今作はどちらかというとブラックメタルに傾倒した印象を受ける。
2曲目の"Motions"は、寒々しいブラックメタルで、一聴したとき、???ってなった。当時のSun of the Sleeplessの音のテイストとは大きく違う印象。
だがよく聴くと、トレモロリフのメロディ、そしてバックで鳴る空間的なコーラスが、フォーキッシュな印象を与える。このあたりに、あぁ、Sun of the Sleeplessだ...!て感じさせられる。また、完全な主観だが、湿ったメロディがポーランドのSacrilegiumの大名盤「Wicher」を思い出させる。
4曲目"Where in My Childhood Lived a Witch"は、3分以降の展開がガッツポーズ。湿り気、どこか胸を締め付ける勇壮なメロディを奏でるトレモロリフ。目新しさはないが、これぞジャーマンだ...!と言わんばかりの王道な展開。これがかっこいいんだよジャーマンブラックは...! 本曲もやはりどこかでSacrilegiumを彷彿とするが、よく聴くとSun of the Sleeplessだなぁと思わされる。
6曲目"In the Realm of the Bark"は、よりオールドスクールなブラックメタルな印象を受ける。といっても北欧のそれというよりもあくまでドイツの音だが。
7曲目"Phoenix Rise"が、今作で一番のキラーチューンかもしれない(個人的に)。スラッシーなリフが主体で割と硬質な印象を受けるが、バックのフォーキッシュかつ空間的な音、ボーカルと、ギターのザクザクした音とのコントラストがガツンとくる。
勿論4分過ぎ以降の湿った暗いフォーキッシュな展開も大変良い。前半のアグレッションとの対比が故だろうか。この悲しげかつ湿り気ある展開は、当時のSun of the Sleeplessに一番近いかもしれない。
かつてのSun of the Sleeplessの音を期待していたファン的には一聴しただけでは少々肩透かしな印象を受けるかもしれないが、彼の持ち味は変わらず聴くことができる。これを劣化と取るか、進化と取るかはリスナーに依ると思うが、個人的には完全に受け入れられる。最高の作品と共に帰ってきてくれた...!
2017年ベスト候補確実の傑作だと思う。
最高すぎる。
The Ruins of Beverast - Takitum Tootem!
今年はジャーマンブラックの年になる…!と思ってる次第です、リリースの予定を知る限り。(お久しぶりです
ドイツのブラックメタル、2016年作EP。言わずと知れたVan Recordsよりリリース。bandcampで購入(アナログ聴く環境ないのでディジタルリリース待ってた
本年リリース予定のフルアルバムに先駆けたEPなようだ。2曲入りのうち、1曲はPink Floydのカバーで、実質新曲は1曲目、"Takitum Tootem! (Wardance)"のみ。
これがまたブラックメタルとは違った方面からして面白い。空気感はTROBの持つそれなんだが、Pink Floydを強く意識してるんだろうなと思わざるをえない。
ベースにあるのはどう聴いてもPink Floydだろう。しかしながらTROBの怪しげなアトモスフェリックブラックメタルが、思いのほかこの手のサウンドにマッチしている。
この融合は、ブラックメタルからの他ジャンルへの新しいアプローチではなかろうかと思っている。それくらい斬新に感じている。
TROBを好きな人は驚く一方で、それでも難なく受け入れられると思う。それくらいTROBが掲げるSinister Black Metal (Sinisterの意味:邪悪な、不吉な、悪意のある)とマッチしている。
この手のサウンドを推し進めるのか、それともいい意味で裏切られるのか。
新譜が楽しみだ。
2016年ベスト
遅くなりましたが、2016年ベストをつらつらと。
前年はジャーマンブラックとそれ以外でベストの記事を分けていた
(ジャーマンブラック編)
http://somberatmosphere.hatenablog.com/entry/2016/01/09/014623
(その他編)
http://somberatmosphere.hatenablog.com/entry/2016/01/14/014241
わけですが、今年は一つの記事に。
というのも思ってた以上に2016年リリースの作品を購入していなくてですね…。
とはいえこれまでの選出基準を変えるのも違うかなぁと思ったわけで。
なので今年も、
2016年リリース、再発を除く作品のみ
という基準でいきます。
そんなわけで選んだ作品は少なくなりましたが、とりあえず以下に。
1.ジャーマンブラックメタル編
* Odal - Geistes Unruh
言わずもがなのジャーマンブラックレジェンドの8年振りのフル。初期のスタイルに回帰した今作はやはり最高だった。湿り気溢れるメロが最高なジャーマンプリミティブブラック。
http://somberatmosphere.hatenablog.com/entry/2016/10/18/005958
* Trauer - A walk into the twilight
個人的にはOdalよりもこちらの方がガツンときた。これまでのBurzumish Black Metalをベースに、より寒々しく寂寥感溢れるスタイルに進化した快作。
http://somberatmosphere.hatenablog.com/entry/2017/01/05/013805
…以上です。他にも何作かは聴いたけど、ピンとくるのがなかったので。
余談ですが、Coldworldの新譜は前作の延長線上な印象は拭えず、期待以上の感動はなかったので、除外しました。
2.他のブラックメタル編
* Sorcier des Glaces - North
カナダのプリミティブブラックメタル。90年代から活動しているベテランながらも、2016年にまだこのサウンドスタイルを貫くか…でもかっこいい!と思わざるを得ない、古きよきブラックメタル。2016年リリースされたブラックメタルの中でで文句なしのトップ。タイトルトラック"North"の持つ寒々しさとメロウさの殺傷能力の高さは筆舌に尽くしがたい。
* Fluisteraars - Gelderland
オランダのブラックメタル、2016年EP。2曲しか入っていないものの、ジャーマンブラックに通じる湿り気溢れるプリミティブブラックで、今作も最高だった。フルアルバム自体は2015年にリリースされているものの、早くフルアルバムを聴きたいと思わせられた。
* Vredehammer - Violator
ノルウェーのブラック・デスメタル。元Eliteのメンバを擁する。ブラック・デスの暴虐さと勢いは失わず、最近のノルウェーのバンドでよく聴かれるどこか理知的というかプログレッシブな印象を受ける洗練されたサウンド。ブラックメタルというよりメタルとして一級品。SdGの新譜と同じくらい衝撃を受けた快作。
* Psychonaut 4 - Neurasthenia
グルジアの鬱ブラックメタル・ロックの最新作。Lifeloverの後を継ぐバンドはこいつらしかいないとずっと言ってるわけですが、今作も文句なしの快作。LifeloverやOfdrykkjaで聴かれる都会的鬱ブラックを推し進めた傑作。引き篭もり系DSBMとは違う方向の鬱屈さを感じられる。
* Hypnologica - Neutrino
UKのアトモスフェリックブラックメタル。Self-inflicted Violenceのメンバによる独りブラック。ポストロック、エレクトロニカのエッセンスを、寒々しいブラックメタルに上手く融合させ、独特のアトモスフェアを表現している。ColdWorldの1stを聴いたときと同じくらいの衝撃を受けた。
https://hypnologica.bandcamp.com/album/neutrino-2016
3.他のHR/HM編
* Megadeth - Dystopia
言わずと知れた超大御所の最新作。数多く作品をリリースしていながらも相変わらずのMegadethらしい捻くれたサウンドで文句なしのかっこよさだった。相変わらず、と言っておきながらも、何度聴いても飽きないくらい、曲に魅力があるなと感じた。いやはや、今までの名作に負けず劣らず。個人的には「Endgame」以来にガツンときた。
* Treat - Ghost of Graceland
スウェーデンのハードロック、Treatの最新作。前作「Coup de Grace」から6年も経っていたのか…。「Coup de Grade」で聴かれた疾走感あるポップなトラックは少ないものの、地味にじわじわくるメロディがたまらない。完全に後追いで全作聴けてないし、門外漢であるが、Treatらしいなと思わされる哀愁漂う北欧ハードロックでかっこよかった。
以上、9作。
2017年はもう少しブラックメタルを掘るようにしたいと思います。
本年も気まぐれ更新になるのは確実ですが、見てくれているごく少数の奇特な皆さま、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
Trauer - A walk into the twilight
ドイツのブラックメタル、2016年作2ndフル。同郷のNihilstische Klangkunstよりリリース。同じタイミングでフルアルバムをリリースしたKerker、最近音沙汰がないTodesklut、Todessehnsuchtのメンバーが絡んでいる。
2014年にリリースした前作の感想
(http://somberatmosphere.hatenablog.com/entry/20150219/1424360544)
でも似たようなこと書いてるが、彼の作品は昔から好きなので追いかけているわけだ。
今までどおりの湿り気溢れるDSBMなとこは相変わらず。
これまでの作品と大きく違う点としては、長尺の曲がなくなったこと。全部10分以内に収まっている。
また、今までの作品以上にわかりやすくメランコリックかつ寒々しいギターのトレモロリフを聴くことができる。
2曲目"A servant to the desert"。
Kerkerのようなモコモコした音質悪いプリミティブブラックっぽさを感じる。ブラスト入ってきたりして、え、あれ!?Trauerどうしたの?ってなる。
と思いきや、Xasthurを彷彿とする不穏な空気を纏ったアトモスブラックが主体な曲に様変わり。
Xasthurフォロワーは星の数ほどいると思うけど、Maleficのあの不穏なアトモスフェアを出しているバンドあまり思いつかないから結構びっくりしてる。
Xasthurの不穏感をバックにしながら徐々に悲壮感溢れるギターのトレモロリフが空間を支配していく。じわじわくるこれがまたいい。
"Walking in the twilight"。Kerkerみたいなモコモコした音質でツタツタ疾走する展開が多いが、メロの殺傷能力がこちらの方が断然強い。
これに加え、悲しげなアトモスフェアを纏いつつもアルペジオで奏でるしっとりとした展開、寂寥感全開のトレモロリフで聴き手を殺しにかかる展開。ころころ魅せる顔が変わる。
そしてそれを踏まえたラスト1分ちょいの疾走パート。これが強烈。メランコリーが炸裂している。
続く"Procession in the fog"。
逼迫した絶望感しか感じられない。
2016年にしてここまで追い詰められるDSBMを聴くことができると思わなかった。絶望・寂寥感。この言葉でしか形容できない。スローパートからの疾走パートのギャップがほんと強烈。
そして"When our heartbeats counting down"で死ぬ。Cry till Die。
これまでのBurzumish BMから脱却し、よりアトモスフェリックに、よりメランコリックに進化した。2016年にしてDSBMの傑作が来たわ。
ざっとまとめると、Xasthurの持つ不穏な空気感と殺傷能力高いメランコリックなメロディが同居したPrimitive/DSBM。
間違いなくかっこいいんだけど、Kerkerのスタイルに似通ってきた側面もあるので、うまくスタイルを使い分けて欲しい気持ちもちょっとあった。
初期Xasthurの不穏感+湿度高いメランコリックDSBMが好きな人は絶対楽しめると思う。
新しいことは特に感じないが、ここまで殺傷能力を高めてきたか、と。感服。
Cry Cry Cry... Die.
予告:2016年ジャーマンブラックメタルベスト
近いうちに挙げます。
誰も得しないこと間違いなし!
Wigrid / Sunshine and Lollipops - Split the Indifference (Geteilte Gleichgultigkeit)
ドイツのブラックメタルのスプリット、2014年作。
Wigridは当時のNo Colours Recordsの看板娘的存在のDSBM黎明期に活躍したバンド。およそ10年近くぶりに音源を出した。
Wigridは1曲のインストとブラックメタルトラックの計2曲を収録。
1曲目のインスト"Desoziierend"は、かつてのWigridが奏でていた儚げでメランコリーな曲。彼の2ndフルの大名曲、"Die Asche eines Lebens"をより朧げにしたかのようなサウンド。
ブラックメタルトラックである2曲目"Trostdistanz"。これがほんと素晴らしい。俺たちのWigridは10年経っても健在だった!
一言で言えば、消え入るかのような儚げなメロディをフィーチャーした初期Burzumishなブラックメタル。
特に7分過ぎからの展開は聴いていてとても寂しくなって消えたくなる。これがWigridだ。安心して悲しみに身を沈められる。
DSBMは衰退した現在のブラックメタルシーンにおいても初期Burzumish BMをやっていてとても好感が持てる。
当時のNo Coloursお抱えのバンドサウンドが好きなリスナーは嬉しくなるはずだ。Abyssic Hate、Wigrid(2nd)、初期Nargaroth、Orenda、Sterbend、Nyktalgiaあたり。
スプリット相手のSunshine and Lollipopsはブラックメタルとクラストを混ぜたようなブラックメタルな曲展開でありつつもやけくそVoで突っ走るスタイル。これもなかなかかっこいい。あくまで曲はジャーマンブラックらしい硬派な印象を受ける。
両者まったく違うスタイルのブラックメタルで、なぜスプリット出したんだろう?と思ってしまう。鬱系もクラストパンクなブラックメタル;も両方が好きな人は作品全体を楽しめると思われる。
Imperium Dekadenz - Dis Manibvs
ドイツのブラックメタル、2016年作5th。Season of Mistよりリリース。3年振りのフルレングス。
10年前の1stの頃から追いかけているが、今ではSoMからリリースするほどの人たちになったのね。Time flies.ですよほんと。
相変わらず儚げかつメランコリック、アトモスフェリックなブラックメタルをやっている。寒々しく疾走するパートとペイガンブラックを彷彿とする雄大でゆったりと進行するパートの対比が聴かせる。
着実と音楽としての完成度は高まっていることは、特にSoMに移ってから感じることができるわけだが、いかんせんうまくまとまり過ぎている感じ。耳障りが良すぎるというか。悪く言うと自分が求めるブラックメタルとしての尖った部分(or 深み)があまり聴かれない(個人の趣味にしか過ぎないが)。
単調なブラックメタルでも自分たちの音楽性を突き進めていてかっこいサウンドをやってるバンドは勿論いるが、Imperium Dekadenzはここ数作を聴く限り初期の衝撃が減退していると思わざるを得ない。何度もリピートして聴きたいと思わせる力がない。
レベルは高いと思うが、特筆するほどでもない、悪く言うと今の時代凡庸。他の新しい若手バンドに比べて先駆者としての深みも大きくは感じられない気がする。
とはいえ全体的なレベルは高いので、アトモスフェリックブラックが好みな人は楽しめると思う。
悪くはないんですよ、でもこう個人的にガツンと来ないというか。。。