Somber Atmosphere

ドイツのブラックメタルの感想を載せています

Hamleypa - Im Morgen von Einst

ドイツのブラックメタル、2015年作。メキシコのThroats productionsよりリリース。メキシコにCDをオーダーするの怖かったのでbandcampで購入。

2010年にでた自主制作EPを以前紹介したが、今作も前作同様の湿り気が素晴らしいジャーマンブラックをやっている。

一曲目、"In tausenden Flussen"ではポストロックで聴かれるような展開からスタートして、!?ってなったけど、3分あたりから湿り気と憂いの溢れるブラックメタルになって疾走。11分と大曲ながらもあっという間に聴き通すことができる。ラスト3分くらいにより憂いのあるミッドテンポに転調してからの再度疾走する展開には悶絶せざるをえない。ラストに向けてどんどんドラマティックにかぶせていくスタイルは前作同様で素晴らしい...。

次曲"Endlos"も湿り気溢れる疾走主体の曲でかっこいい。本曲もラストに向けてドラマティックになっていく。ピアノを入れたスローな展開からの爆発するとこがやはり琴線に触れる。

三曲目"Diese Welt, das was war, die Erinnerung an dich, unser Werk war es und unseres allein"、ラストトラック"Algol"も同様。でも前二曲以上に湿り気溢れるトレモロリフが全開で、かなり琴線に触れる。特に"Algol"のラスト数十秒がほんとドラマティック。

印象として前作同様の湿り気溢れるジャーマンブラックであったが、前作よりもバースト系のポストロック的な展開を盛り込んでみようといった試みを感じた。それおまえポストロックの有名どころの焼き直しじゃん...といったあざとい印象はそこまで受けなかったからよかった。
彼らの作風ならうまく組み入れられそうではあるが、去年出た某WoDの新作みたいにくっそつまらなくなったら最悪なので、ポストロックを組み入れるのは怖いところ。

なんにせよ本作の完成度は非常に高いので、本年リリースのジャーマンブラックでまず間違いなくトップに入ってくる素晴らしい作品なのは間違いない。

良い良い

Trauer - ...a Man with a Load of Mischief

ドイツのブラックメタル、2014年作。同郷のNihilstische KlangkunstとイタリアのWar against Yourself Records (昔のMidwinter Records)より共同リリース。今年まさかのフルアルバムをリリースしたKerker、最近音沙汰がないTodesklut、Todessehnsuchtのメンバーが絡んでいる。

彼らの作品は2007年くらいから追っているわけだが、相変わらずジャーマンらしい湿った鬱ブラックをやっている。大作主義なのも変わらず、5曲で1時間弱なのも長尺で良い。

1曲目"Above All Silence"(13分)からほんと気が滅入る(褒め言葉)。2015年になるというのに変わらずBurzumish Blackなところが○。スローテンポにメランコリックで胸を締め付けるトレモロリフで展開する。
2曲目"Cascadian"...Cascadian?Cascadian BMか?と思ったらなんも変わらないきつい(褒め言葉)鬱ブラック。

15分弱あるタイトルトラックはメロの湿り気と寂寥感が一番強い。10分あたりの展開が絶望的ながらもドラマティックでとても胸に沁みる。

少ないリフで延々とループする古き良き鬱ブラック。楽しめない人は全く楽しめない退屈なサウンドなのは相変わらず。ただなんとなく印象としてこれまでの作品よりもメロの殺傷力が減退したような気がする...がタイトルトラックのそれは強く、大変素晴らしい。泥酔しながら聴くととても楽しめる。

本作でyoutubeに上がってるのはこれくらい?

Vargnatt - Nur ein Traum

ドイツのブラックメタル、2007年作デモ。同郷のKarge Welten Kunstverlagよりリリース。
当時レーベルオーナーの彼は未成年らしくクレカを持ってなくてPaypalが使えなかった記憶。
そのため本音源は当時買えなかったのだが、最近になってbandcampでディジタル音源を販売し出したので、すぐさま購入。

して内容は荒涼とした側面を出しつつも、基本的には前作同様湿り気ある鬱系のブラックをプレイ。アルペジオの寂しげな音色をうまくフィーチャーしているところが良い。
以前紹介した前作デモの「Wintergrab」ではアトモスフェリックな鬱系の音が支配的だったが、今作ではプリミティブブラックのそれをうまく持ち込んでいる。

1曲目"Seelensang"では前半が特にプリミティブブラックのそれであり、"Portrait einer Nacht"、では全体的に更にアトモスフェリックな空気感を纏い、大変素晴らしい。ラスト一分のアルペジオ主体の陰鬱な展開は胸にぐっとくる。
続く"...vom Suchen der Holle"、"Umnachtung und Weisheit"は全編アトモスフェリックかつ寂寥感溢れる鬱ブラックで、これがほんと胸に沁みる。

さてタイトルトラック"Nur ein Traum"だが、クロノトリガーの曲のブラックメタルアレンジ。一時期話題になったやつ。曲の基本形は崩していないのだが、原曲よりも更に冷たく、そこにブラックメタル的なガナリ声が遠くから聴こえてくる。なんとも素晴らしいブラックメタルアレンジといえよう。

クロノトリガーブラックということでタイトルトラックの"Nur ein Traum"に興味が向きがちだが、他の曲もアトモスフェリック鬱ブラックとして素晴らしい曲が多い。
中期Burzum、Wigrid、Selbmorrdあたりを思い出す。また冷たいアンビエントをフィーチャーしてるあたり、初期ColdWorldにも近い印象を受ける。ColdWorldのデモがリリースされたのもこのあたりの時期だったか。

今聴いても色褪せないアトモスフェリック鬱ブラックの傑作だと思うので、この手のサウンドが好きな人は是非。

これがほんと素晴らしい

クロノトリガーブラック

Hallig - 13 Keys to Lunacy

ドイツのブラックメタル、2012年作。Folter recordsよりリリース。

内容はドイツの湿り気と憂いを帯びたトレモロリフ主体で疾走する、オールドスクールなジャーマンプリミティブブラックメタル
疾走展開だけでなく、途中ミッドパートで湿った展開を入れたりして、聴いていて曲が飽きない。薄っすらメロウに疾走る展開が大変琴線に触れる。いずれの曲も1曲も5分〜7分程度と聴きやすいのも○。

2曲目"Reinvigoration"あたりは寒々しくも薄っすらメロウなトレモロリフで疾走するところがたまりませんな。
4曲目"Epiphany"は更にドラマティックに展開するパートが聴かれ、これがまたとても素晴らしい...
7曲目"Unter Mehschen"は更にドラマティックに展開する疾走パートが大変素晴らしい。
曲を追うごとにどんどんかっこよくなる、"13 Keys"はテンション高くドラマティックに疾走する。特に後半からの湿り気保ちながら厭世的に突っ走るパートは悶絶。

というわけで、あまり知名度高くなかったけど、素晴らしいジャーマンブラックであった。
初期Odal + 荒々しいHelrunar、といった表現がしっくりくるような、当時のジャーマンブラックメタルを高品質なレベルでプレイ。

その辺りが好きな人はまず楽しめる。

あまりyoutubeでは転がってなかったので、一曲目で。

2014年ベスト(ジャーマンブラック編)

2014年の間に聴いてきたジャーマンブラックのベストを。
2014年リリース、再発を除く作品に限ります。順不同。

Eismalsott - Weissblendung
Faulnis - Snuff//Hiroshima
Infestus - The Reflecting Void
Kermania - Kehre Heim...
Nemesis Sopor - Glas
Rimruna - Frostbann
Sun Worship - Eldger Giants
Zeugen der Leere - Seelenwandrer

2014年は良いジャーマンブラックに巡り会えた。いろいろ悩んだけど、ピンときた作品がこの辺り。
以下、雑感。

Eismalsottはdigital onlyだったけど、本当に素晴らしかった。初期Geistと近年のGeist(Eis)の間くらいというか、ストイックなジャーマンブラックで大変よかった

Faulnisは相変わらずのSick Black Art。Hiroshima! ジャーマンブラックメタルとロックの融合として完成度を高めてきた。

Infestusは言わずもがなの最高の出来だった。作を追う毎にどんどん深化していく。期待した甲斐があった快作。

Kermania。待ちましたよ待ちました、およそ一年。疾走展開が無くなったのは残念だったけど、相変わらずの湿ったアトモスフェリックブラックをやっていてよかった

Nemesis Soporは同郷のDrengskapurとのスプリットで知った存在で、本作フルアルバムは文句なしの完成度であった。展開よし、アトモスフェリックよし、ジャーマンよし!

RimrunaはDrengskapurの別バンドということで、あぁDrengskapurだなぁと思う一方で、寒々しさはこちらの方が上でした。安心の出来。

Sun Worshipは突如現れたドイツなのにCascadian Black Metalやってる人たち。その衝撃は大きく、また曲の完成度も高くてとても楽しめた。

Zeugen der Leereは全く知らなかったわけだが、いざ聴いてみると琴線に触れまくりのアトモスフェリックジャーマンブラックでしたな。


2015年も素晴らしいジャーマンブラックに出会えますように。

Infestus - The Reflecting Void

ドイツのブラックメタル、2014年作4th。前作同様フランスのDebemur Morti Productionsよりリリース。

初期の勢いあるメロウなプリミティブブラックから、作を追うごとに彼らのテーマであるDarkness, Deathをより理知的に深淵に迫るかのように推し進めた作風に変化していったわけだが、今作も更に深く暗い空気を出すことに成功している。

2曲目"Spiegel der Seele"はまさに今の彼らの完成度の高さを物語っている。暗くも湿り気あるジャーマンブラックらしいトレモロリフで展開していく。疾走展開一辺倒でなく、暗くミッドテンポで進行するパートもはさみ、曲の完成度はとても高い。スローに展開するところではよりリチュアリスティックになっており、ノルウェイジャンブラックのそれに近いものを聴くことができる。また、無骨に展開するのではなく、暗くも薄っすらとメロウなリフが聴かれるところが非常に素晴らしい。

続く"Constant Soul Corrosion"もまた同様の展開ながらも、より複雑な展開をしている。
"Cortical Spreading Darkness"はこれまでの展開の中にドラマティックに展開するパートを備え、とても琴線に触れる。特に5分過ぎからの展開がすさまじくかっこいい。ブラスト疾走をバックに寂寥感溢れるトレモロリフで展開する様に震える。まったく隙がないキラーチューン。ブラスト疾走展開のかっこよさ、そして寂寥感溢れるミッドテンポの展開に胸を締め付けられる"Devouring Darkness"もまた大変素晴らしい。

前作以上に静と動をうまく活用することで、更なる深化を遂げた快作といえる。また胸を締め付ける暗くも寂寥感ある展開が増えたようにも感じる。展開も豊富で、アルバム一枚をあっという間に聴き通すことができる。

近いバンドとして、高い完成度を保ちながらも暗く無骨なブラックメタルをプレイしている最近のHelrunarを思い出した。
この辺りのあまり色気を出さないストイックなブラックメタルが好みであれば楽しめると思う。

これがキラーチューンかな。どの曲も完成度は高いのでハズレはないと思う

こいつもまた最高にかっこいい。

2014年ベスト(ジャーマンブラック以外)

遅くなりましたが、2014年の間に聴いてきた音源のベストを。
まずはジャーマンブラック以外のカテゴリで。
2014年リリース、再発を除く作品に限ります。順不同。

Agalloch - The Serpent & Sphere(US, Folk/Black Metal)
Anomalie - Between the Light(Swi, Post Black Metal)
Ars Moriendi - La singuliere noirceur d'un astre (Fra, Atmospheric Dark Metal)
Astral Root - Voices from the Void (Chile, Depressive Black Metal)
Aurvandil - Thrones (Fra, Black Metal)
Ealdulf - Wolven Sentinals (UK, Black Metal)
Kladovest - Winterwards (Ukr, Atmospheric Black Metal)
Solstafir - Otta (Isl, Post Metal/Viking)
Vredehammer - Vinteroffer (Nor, Black/Death Metal)
Woman is the Earth - Depths (US, Atmospheric Black Metal)

次点:

Ofdrykkja - A Life Worth Loosing (Swe, Depressive Black Metal)
Profetus - As All Seasons Die (Fin, Funeral Doom Metal)
Sorcier des Glaces - Ritual of the End (Can, Black Metal)
Taiga - Ashen Light (Rus, Depressive Black Metal)
Vampillia - my beautiful twisted nightmares in aurora rainbow darkness (Jpn, Avantgarde)


総じて、2014年は良い作品に多くめぐり合えた気がした。いろいろ悩んだけど、ピンときた作品がこの辺り。
以下、雑感。

待望のAgallochの新作は期待通りの素晴らしい出来だった。前作以上に好み。

Anomalieはポストブラックが流行りまくった中、あくまでジャーマンブラックらしい湿ったサウンドの中にうまく洗練された雰囲気を組み込んでいて、とてもよかった

Ars Moriendiは相変わらずのフランスらしい厭世感漂うサウンドで、より彼らの得意とするところを推し進めた快作であった

Astral Rootは特に新しいことはやってないけど、高品質なデプレッシブブラック、ドゥームなサウンドでよかった

Aurvandilはフランス産ながらもフランス産らしい退廃的な雰囲気は少なく、ジャーマンブラックのようなプリミティブブラックをプレイ。安心の出来。

EaldulfはUKのSelf-Inflicted Violenceの人らの別バンド。これがまたFreeDLにも拘わらず非常にかっこいい。新譜が楽しみである

Solstafirはいわずもがな。ポストメタル路線に傾倒してからも、彼らのVikingテイストは忘れずにで、期待通りの快作だった

Vredhammerは元Eliteの人の別バンド。とりあえず完成度が非常に高い。ノルウェイジャンブラックリバイバルがところどころで見られるが、この作品は本当にガッツポーズであった。

Woman is the Earthは、さすがEisenwaldが拾ってきただけあって、高品質なアトモスフェリックブラックであった。

次点以下では:

元ApatiのメンバのOfdrykkjaは鬱屈したLifeloverとApatiをかませたような、気が滅入る良い鬱ブラックであった。Avantgardeからリリースされたのも納得。

葬式ドゥームはろくに買わなかったけど、このProfetusの新譜は非常にすばらしかった。Mournful Congregationは結局まだ買ってない...

Sorcier des Glacesは前作のようなキラーチューンはなかったものの、安心して聴けるコールドブラックだった。

最後のVampilliaは言わずもがな。素晴らしかった。


といった感じで。
ジャーマンブラックベストは後日紹介します。