Somber Atmosphere

ドイツのブラックメタルの感想を載せています

Traumen von Aurora - Sehnsuchts Wogen

ドイツのブラックメタル、2012年作、1stフル。Trollzorn Rec.よりリリース。意外なレーベルからのリリース。

して内容は、ポストロック系の幽玄かつ洗練された雰囲気をブラックメタルのそれに取り入れたサウンド。とはいえブラックメタルのアグレッションや鬱ブラックの寂寥感といった素晴らしさを捨て去らない素晴らしい作品。

一曲目"Insomia"からそれを聴くことができる。アーバンな雰囲気を保ちながらも、鬱ブラックに通じる寂寥感と寒々しさを聴かせてくれる良質な鬱ポストブラック(ポスト鬱ブラックではない)。

二曲目"Parfum"はより鬱寄りのサウンドで、胸を締め付けるギターのアルペジオが心に沁みる。またKeyの寂しげな音色もたまらない。これらのコラボレーションがぐっと寂寥感を増大させる。ラスト1分の寂寥感ぶちまけながらのブラスト疾走はガツンとくる…。

三曲目"Welknis"の素晴らしさ。洗練された雰囲気、鬱ブラックの悲壮感、ジャーマンブラックらしい湿り気あるトレモロリフ、そしてラスト一分のドラマティックな寂寥感ぶちまけたギターソロ。最高である。
"Firn"は他の曲よりもトレモロリフをフィーチャーしており、寂寥感とドラマティックさを兼ね備えたブラックメタルをやっている。ラスト一分のドラマティックさ足るや。

12分ある大曲、"Reflexion"。ウィスパーVoと絶叫Voをうまく使い分けながら、おとなしい序盤から中盤に向けてKeyをフィーチャーしながら徐々に盛り上がって行く。そして中盤からのトレモロリフの悲壮感がとても素晴らしい。中盤の悲壮感溢れるミッドパートを経て、徐々に盛り上がる後半。ドラマティックに疾走するかと思いきや、聴かせる展開で終わる。
ラストトラックも4分程度ながら、全体をサマリーするような、悲壮感全開のポストブラック。アウトロトラックかと油断していたらやられた。

全体的に捨て曲がない、鬱系、ポスト系、ジャーマンブラックを絶妙な塩梅で取り込んだ作品。

2ndはよりポストロック系のサウンドを取り入れる方向に傾倒してしまったが、今作はポストロック系のエッセンスを取り入れながらもあくまで鬱ブラックの悲壮感が強いサウンド。ブラックメタルのアグレッション、鬱ブラックが持つ寂寥感、ポストロック系の洗練さをいい塩梅で消化できている良い作品だと思う。ポストブラックというより鬱ブラックと言った方がしっくりくる作品。

なんというか、Keyやピアノを使ってる鬱ブラックは胸を締め付けてくれてほんとどれも素晴らしいと思う。

どの曲が一番のキラーチューン、ということもないが、この辺を挙げておく。