Somber Atmosphere

ドイツのブラックメタルの感想を載せています

Kerker - A Dime for the Bleak Faces

ドイツのブラックメタル、2015年作。Todeskult、Trauer、Todessehnsuchtのメンバが絡んでいる。同郷のNihilistische Klangkunstより477枚限定でリリースされた。7曲41分、一曲の長さも6分程度と長過ぎず聴きやすい。
デモをずっと探していたが結局見つからずで残念に思っていたところにまさかの本年フルアルバムが発売されて驚いた。

彼らが絡んでいる他のバンドはどれも鬱ブラックよりのサウンドなのに対して、本作は古きよきプリミティブブラックをやっている。Darkthroneの4thあたりを彷彿とする劣悪な音質で疾走主体の展開。ドラムのボコボコ具合が大変RAWで気持ちよい。
しかしながらやはりジャーマンブラック、トレモロリフが薄っすらとメロウで非常に琴線に触れる。
特に2曲目のタイトルトラックが素晴らしい。リフの湿り気と儚げさがこれぞジャーマンブラックだ!って感じでガッツポーズをとりたくなる。

続く3曲目"Sighisoara Winter"は彼らの持ち味である鬱屈したメロディが主体。疾走展開とスローな展開が入り混じるが、スローな展開の鬱屈した雰囲気が大変素晴らしい。

4曲目"Prague"では大胆にピアノを全面に押し出しており、音質を悪くしたLifeloverのような曲になっている。これがまたLifelover系でありながらもノイジーなブラックメタル成分が強いのでかなり耳に残る良曲。

5曲目"Douleur oblige"以降はジャーマンプリミティブブラック路線に戻っている。劣悪でノイジーな音質、ボコボコ叩かれるドラム、そして寂寥感漂うメロウなトレモロリフの対比が大変かっこよし。

ラストトラック"His Fairway Left"がキラーチューンだろうか。これまでの楽曲以上に哀愁と湿り気を詰め込んだ疾走主体のプリミティブブラック。あまりにも哀愁成分が強すぎて胸が締め付けられて本当に素晴らしい。

といった具合で、古きよきプリミティブブラックにジャーマンブラック特有の湿り気と寂寥感、哀愁成分を帯びたメロウなトレモロリフを突っ込んだ作品。いずれのトラックも湿り気と哀愁の強さは強烈なので、どれも胸に沁みる。
特に新しいことはやっていないが、やはりこういうバンドはかっこいい。

近いバンドとしては、Todeskultの1stの雰囲気に近い気もする。もしくは挙げるとすれば初期Odalだろうか。ここまで劣悪ではなかった気がしたし、ここまで哀愁全開じゃなかった気がしたが。なんにせよ、初期ジャーマンプリミティブブラックが好きな人は楽しめると思われる。

これしかひっかからなかった。