Somber Atmosphere

ドイツのブラックメタルの感想を載せています

Membaris - Entartet

ドイツのブラックメタルの4thフルレングス、8曲70分と尺が長い。悪名高きARTicazからずっとリリースを続けてきたが、今回のARTicazのふざけた対応で愛想を尽かした模様(彼らのFBによると)。自分もgrauから購入しようとしたところ、grauのオーナーからARTicazに連絡がつかなくて手に入らない、と言われ、泣く泣くオーダーキャンセル。結局年明けにEternity Recordsから購入。

さて本バンドMembarisだが、オールドスクールな色気のないブラックメタルに薄っすらとメロディを被せてくる、いわば地味で片付けられそうなバンドである。がしかし、要所で薄っすらながらもドラマティックかつメロウな展開を入れてくるのが非常に素晴らしいのである。勿論、前作「Grenzganger」の7曲目"Remains of Solitude"のようなメロディックかつドラマティックさ全開で突っ走る曲も大変素晴らしいが、やはり近年の彼らの持ち味は色気は無しにストイックかつ無骨なブラックメタルであろう。演奏が上手、かつタイトであり、緊張感すら感じる。ドラムの手数も多くブラストパートではその速さに驚くことも多い。

前作「Grenzganger」の名曲"Remains of Solitude"


さて本作「Entartet」だが、あくまで前作の延長線上でありながらも曲構成が更によく練られており、時折プログレッシブさすらも感じることがある(言い過ぎか)。スローパートを効果的に取り入れ、更にクリーンVoとグリムVoのツインといった新しい試みも聴かれる。ただ、疾走パートとスローパートの入れ替わりが割と多く、もう少し長く疾走してほしいのに!とやきもきすることがところどころで感じられたのが少し残念。

2曲目"Monotonkrieger"はいままでの彼らを彷彿とする色気控えめに疾走する曲、かと思いきや中盤スローに転調し、なんかとっても神秘的というかそんな感じで終わる。なんかとても難解な印象を抱いた。

3曲目"Stromungen"は本作でもかなりメロウな曲ではなかろうか。開始で聴かれるメロウなトレモロリフはまさにMembarisが持つそれであり、やはりかっこいい。またこの曲もスローに、葬式ドゥームかと思ってしまうほど重く遅いパートがある。そのため、もともと速い疾走パートとの対比が強烈に感じられる。ラスト1分の寂寥感すら感じられるスロー〜疾走する部分は悶絶する。

12分弱の大曲であるタイトルトラック"Entartet"もまた地味な展開が支配的ではあるが、要所要所で逼迫した雰囲気を感じさせながらもメロウなトレモロリフで突っ走る展開が非常に素晴らしい。本曲もラスト2分のマイナー調のメロウなトレモロリフが痺れる。

3分弱のinterludeを挟み、残り3曲は8分、9分、13分といずれも大曲。

"Midas"ではのっけからオールドスクールながらも薄っすらメロウに疾走。こういうわかりやすいブラックメタル曲もかっこよし。もう少し色気があってもよかったのでは、と思わなくもないが、この絶妙なバランスを作るいぶし銀の渋さはたまらない。
次曲"Auszuge aus demTagebuch eines Steineziehers"でも同様に疾走する曲。鐘の音のSEを入れるなど荘厳さを出しているが、メロウさは控えめか。

して本作最大の大曲であるラストトラックの"Ein Zustand in der Ferne"。本曲もどちらかというと疾走メインであるが、弦楽器の音色を加えたりクリーンVoで歌ったりと、前半の曲のように豊富な展開が聴かれる。やはり最後の数分の展開が一番熱い。疾走走展開の上にのるメロウなトレモロリフが際立ち、ドラマティックに曲を〆る。

1stからずっと大好きなMembarisであるが、作を追う毎に曲に多くの展開を入れるようになり、プログレッシブな方向に進化してきていると感じた。だが彼らが持つジャーマンブラックらしさというか、持ち味は捨てておらず根っこは変わってないと思う。
聴く人によってはどんどん地味になっていると感じるかもしれないが、よく聴くと彼らは何も変わってない。良い意味で深化してきていると思う。できれば2012年のうちに聴いておきたかった、個人的にはベスト20には間違いなく入る完成度。ただ彼らが大好きなだけかもしれないが。

やはり出回ってないせいか、2曲目"Monotonkrieger"しかyoutubeにはなかった。これよりも次曲"Stromungen"やタイトルトラックの方が素晴らしいと思うだけに残念。