Somber Atmosphere

ドイツのブラックメタルの感想を載せています

Slaktare - Journey into Darkness

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ドイツのブラックメタル、2015年作。Misanthropic Art productionsよりリリースされた。待ちに待った待望の1stフルレングス。
前作EP"Love is always Painful"ではしみったれた湿り気哀愁溢れるブラックメタルであったが、今作でも勿論その側面は楽しむことができる。

一曲目のタイトルトラックからそれを堪能できる。悲壮感全開の疾走ブラック。寂しげで幽玄なKeyをバックに寂寥感溢れるトレモロリフで展開する哀愁サウンド。特にラスト一分の涙腺直撃の悲壮感全開のトレモロリフがとても琴線に触れる。

かとおもいきや二曲目"Satanic Insanity"ではタイトルからも想像できるようにオールドスクールブラックメタルに突然変貌。Hornaあたりを思い出すフィンランドブラックのようなノリノリな展開。ギターソロも入ったりしてびっくり。あまりのギャップに最初何が起きたのか理解できなかった。。。

三曲目"Psychotic and Fucked Up"、四曲目"Souldestruction"でも同様なオールドスクールな楽曲。リフがどこかCamulosあたりの初期ジャーマンブラックな印象を受けるが、これまでのSlaktareの湿ったテイストとは大きく違う。。
と思いきやどちらの曲もラスト2分半ではこれまでのオールドスクールな展開に突如湿り気溢れるトレモロリフが入ってきて、ドラマティックなサウンドに変貌する。このラストの展開のための布石だったのか…!と思うと本曲もとても楽しめる。

段々Slaktareらしくなってきたなと思えてくるのが次曲"The Mystic Fog of the Soulless Being"。これまでのSlaktareの女々しいサウンドに幽玄なKeyが絡む。ギターの寂寥感溢れるトレモロリフをバックに幽玄なKeyが主体となり疾走する展開はなかなか癖になる。

続く曲は"Laubfall II"。"Laubfall"はデモ「Anguished」で収録されていたが、こちらは鬱屈したスローに展開する佳曲であった。ではIIはどうか? …め・・・女々しい湿り気が帰ってきた!これぞSlaktareだ!と言いたくなる鬱屈した湿り気全開のスローな曲。あまりに女々しく鬱屈したhikikomoriメロディがほんと最高。
5分過ぎからの疾走展開も最高にかっこいい。スローテンポな展開ではギターが主体であったが、疾走展開ではこれまでのトラックでも聴かれた幽玄なKeyが割と表に出てくる。鬱屈したhikikomoriトレモロリフとアトモスフェリックなKeyのコラボレーションがここで極まる。最高にかっこいい。

ラストトラック"Built on Ruins"はこれぞ自分が求めるジャーマンブラック!と言わんばかりの湿り気、寒々しさ、寂寥感三拍子揃った疾走ブラック。他のトラックでも聴かれる幽玄なKeyは本作でも活躍していて、これがまたいい味を出している。12分半もある大曲ながら展開は終始変わらないが、全く飽きずに聴き通すことができる。

オールドスクール疾走する曲もあってギョっとするが、聴き通してみると今までのSlaktareが好きならまず楽しめる。
先日紹介したAnachoretのやり過ぎメランコリーな展開にも近いものを感じる。他にWedardやKlage、Kargvint、Morkekunstといった同郷の鬱系ブラックが好みならSlaktareも楽しめると思う。

 

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やっぱSlaktareだなー!だなー!

 

Anachoret - Horizont

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ドイツのブラックメタル、2015年作EP。同郷のDer neue Weg Productionsよりリリースされた。

これでもかってくらい哀愁成分を詰め込んだ鬱ブラック。メランコリックなトレモロリフと寂寥感溢れるピアノが相乗して哀愁全開なサウンドを展開。要所で入るアルペジオもまたとても秋冬を彷彿とさせる寂しげな音色でとても良い。

寂しげなインストを経た二曲目"Zerfall"はまさにそれを聴くことができる。反復リフでひたすら進行するスタイルでもなく、割と転調するところが○。ラスト1分で寂寥感がこれでもかってくらい加速する。そして最後のブラスト疾走。悶絶せざるをえない。

タイトルトラック"Horizont"は10分の大曲。ピアノの寂しげな音色が本曲でもとてもいい。そんな寂寥感全開のサウンドに胸焼けしてきたところにノイジーなギターが主体の疾走展開が入ってきて、そのコントラストにやられる。哀愁成分ほどよくドラマティックに転調していく様はとても琴線に触れる。

ラストトラック"Meine Welt, so schwarz"はこちらも11分の大曲。ミッドテンポで哀愁全開な展開、寒々しく疾走する展開、アルペジオ主体のしっとりした展開と様々な顔を魅せる。エネルギーを溜めに溜め、ラスト1分半のドラマティックなブラスト疾走がとてもいい。

近いバンドとしては、同郷のIdisenfluch(スプリットも出している)、もしくはSlaktareあたりだろうか。
哀愁全開サウンドなので少々胸焼けしてしまう側面もあるが、秋冬を強く感じさせてくれるので季節柄外で独り聴きたい。

 

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Infesting Swarm - Desolation Road

ドイツのブラックメタル、2015年作1stフル。Harakiri for the SkyやAnomalieといった良い音源をリリースする同郷のArt of Propagandaよりリリース。8曲60分。

アーカイブスによるとポストブラックとなっているが、聴いた感想としてはどちらかというとメランコリック/メロディックブラックといった印象を受けた。

同郷のDer weg einer Freiheitを彷彿とするメロウなトレモロリフ主体の疾走展開が基軸。疾走展開の湿り気、メロウさは彼らのそれに近いものがあるが、彼らとの大きな違いはよりメランコリーな成分が強いところだろう。スローテンポ、ミッドテンポなパートではギターがとてつもなく寂寥感溢れるメロディを奏でる。この悲壮感強い展開と疾走パートのコントラストがドラマティックな相乗効果を生む。

11分ある2曲目の"Desperation"でそれを体感できる。そして曲を追うごとにメランコリー成分が加速していく。
また"Abandoned Life"では疾走パートで奏でられるギターのトレモロリフが悲壮感をぶちまけており、とても胸を締め付ける。そしてラスト2分の展開が神がかっている。これまで以上に寂寥感全開で涙腺を刺激する。

続く"Der Lauf der Zeit"も同じスタイルでメランコリックかつ濃厚なトレモロリフが支配する。どちらかというこのトラックはブラスト疾走展開が主体で、圧倒される。ラスト一分がそれでもなお加速するメランコリー。すごい。

いずれのトラックも悲壮感全開のメロウなトレモロリフで推すサウンド。一曲一曲のクオリティは大変高いが、アルバム通して同じ作風なので、後半になってくるとちょっと飽きてくるのがたまに傷。

Der weg einer Freiheit(特にEPの"Agonie"あたり)やNyktalgiaの2ndあたりが好みなら楽しめると思う。かなりクオリティ高い。

特に2つめの曲が素晴らしい

Helrunar - Niederkunfft

ドイツのブラックメタル、2015年作4thフル。同郷のProphecy prod.よりリリース。

もともと地味で絶対流行らないサウンドを展開していたHelrunarだが、今作は今まで以上に地味になった印象。

スローテンポで重苦しく進行するドゥーミーな展開が主体。展開が豊富でプログレッシブな印象を受けるものの、聴かれるトレモロリフもメロウさはほとんどなく、ひたすら地味に進行する。疾走するような展開がいずれかの曲でちらほら聴かれるものの、やっぱり地味...。

ラストトラック"The Hiebner Prophecy"だけ一昔前のノルウェイジャンかって感じで地味に疾走する展開が多めで、地味重苦展開との対比が割と耳に残るが、特筆すべきではない感じ。

それ以外書くことのないくらい、地味。地味。

ジャーマンブラックらしい湿り気ある薄っすらメロウな展開を期待すると全力で肩透かし。

今までの作品以上にスーパー地味な作品で、一体誰が喜ぶんだ?って言いたくなる作品であった。ちょっとこれは擁護できない...

強いて挙げるなら、これ、という感じ。

Camulos - Spiel des Blutes

最近ジャーマンブラックあまり買ってないので昔の作品を。


ドイツのブラックメタル、2003年作2nd。今は元気なのかわからないけど当時いいバンドの作品をよくリリースしていたChristhunt Productionsよりリリース。
Camulos、去年はフルアルバム、今年はEPを出したりと突然活動が活発になったことで有名か(有名じゃない)。

して内容は当時のジャーマンブラックらしい憂いと湿り気溢れるプリミティブブラック。寒々しくブラスト疾走する展開とミッドテンポでメロウに聴かせる展開がありかっこよし。

2曲目のタイトルトラック"Spiel des Blutes"が素晴らしい。メロデスか?っていいたくなるようなリフと、これぞジャーマンブラックの王道と言いたくなる寒々しくメロウな展開のコントラストが非常に琴線に触れる。
6曲目"Der Antichrist"なんかもデスメタルな展開が頻繁に聴かれるわけだが、やはりブラックメタルの寒々しいパートを強調するのに一役買っている。

ブラックメタル一辺倒というよりも、ところどころメロデスの流麗なリフやデスメタルの重い展開も入ったりして、曲の完成度としては荒削りな印象を受ける。でも結果的にそれらの異なるジャンルの展開と寒々しいブラックメタルの展開がよいコントラストになって、寒々しく疾走するパートがとてもかっこよく聴こえる。

昔ながらのブラックメタルデスメタルな展開が荒削りに聴かれると聞いてあまり食指は動かないかもしれないが、ジャーマンブラック好きにはアピールできる展開も多い。Camulosファンは聴いてもいいのでは(ほとんどいない)。


youtubeは上がってない模様。まぁ10年以上の作品だものね。

Porta Nigra - Kaiserschnitt

ドイツのブラックメタル、2015年作2nd。前作同様フランスのDebemur Morti Prod.よりリリース。Membarisのメンバーが絡んでいる。

前作ではアヴァンギャルドな側面がありながらもジャーマンブラックらしい湿ったテイストを聴かせてくれたが、今作では前作以上にアヴァンギャルド/プログレッシブ方面に傾倒している。

そっち方面に変化するのはいいのだが、いかんせんジャーマンブラックの地味さを際立たせる方にアヴァンギャルドなのでこれはなかなか聴き手を選ぶ気がする。特にタイトルトラックの"Kaiserschnitt"ではそれが顕著。"In Stahlgewittern"では前半は地味アヴァンギャルドだが、後半はトレモロリフが聴かれたりギターソロ入ったりで聴かせるパートも。

"Hepatitis Libido"では地味アヴァンギャルドな中に儚げなリフも時折聴かれたりしてどことなくA Forest of Starsあたりを彷彿とするも、やっぱり地味。
"Ich-Zerfall"あたりは変拍子な展開多めかつプログレッシブで、地味だけどなんかじわじわくる。

ラストトラック"Der lezte Ton"でまさかの湿り気たっぷり儚げなトレモロリフが支配的なブラックメタル。散々地味アヴァンギャルドが続いたからか、こういうジャーマンブラックなトラックがとても心に響く。彼らのやりたいことからしたら異端なんだろうけど、やっぱりこういうのが琴線に触れる。

全般的に奇跡の地味アヴァンギャルドブラック(ラストトラック以外)。一曲目"Die Mensur"なんかはドイツ版Peste Noireと形容してもいいような側面もあったりで、そこはいいのだが、他の曲の地味さを強調するアヴァンギャルドさがやはり厳しい感じがする。
新しいことやってる印象はあるが、どうにもこうにも…。

奇跡の地味アヴァンギャルド

本作では異端のジャーマンブラックなトラック。

Weird Fate - Seelennacht

ドイツのブラックメタル、2004年作デモ。200枚限定のDigipack仕様でバンドよりリリース。

最近出た新譜や前作のフルアルバムではエクストリームメタルに傾倒したスタイリッシュなIQが高いサウンドのWeird Fateだが、本作ではまだ湿り気溢れるブラックメタルを披露している。

二曲目のタイトルトラックでは湿り気あるプリミティブブラックと胡散臭いシンフォテイストの楽曲が展開される。
続くインストトラックを経た"Heathen Tragedy"では相変わらずの音質悪いプリミティブブラックにペイガン的な勇壮感というかそんな雰囲気が感じられる楽曲を展開。

6曲目"Schmach"や続く"Niemals Fallt die Zeit"では、初期Odalをよりポンコツにしたような湿り気あるプリミティブブラックなサウンドにKeyのポロンポロンした音色が入ってきて時折哀しみ成分ある感じ。だが、完成度的にやっぱり微妙…。ペイガンっぽい印象もあったり胡散臭いシンフォ展開あったりでバラバラ。

全般的にジャーマンブラックらしい湿り気と薄っすらメロウな雰囲気は感じられるけど、いかんせんポンコツペイガンかつ胡散臭いシンフォのバッドトリップ感は拭えない。デモ音源らしい荒削りさはよしとしても、楽曲が面白くない。

Membaris、Weird Fate関連の盲目的な信者(自分)は持っていてもいいが、無理に探す必要はない音源。多分愛がないと楽しめない気がする。


さすがにyoutubeに上げてる人はいなかったようなので、ナシ。